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分院長を任期半ばで突然放り投げる歯科医師【こんな歯科医師、どうする!?①】
このコラムでは、転職エージェントとして見聞きしたお話や、あるいは実際に遭遇したちょっとトンデモ歯科医師についてお話させていただき、こういった事例があるということを、求人情報を出される医院様や、実際に転職、就職活動をされている歯科医師の先生方に知っていただこうということで、数回に分けて書かせていただきます。
これはある大手の分院展開をされている歯科医療法人様で実際に起こった出来事です。ある日、弊社に医療法人の理事長先生から電話がかかってまいりました。理事長先生曰く、分院を任せていた分院長の先生が昨夜、突然に、今月末で退職したいと申し出があったと言うのです。今日は15日なので、2週間後に分院長がいなくなる!これは大変な出来事でしょう。その分院では分院長が一人で患者さんを診ていましたので、分院長が退職するとなると、分院を閉院することになってしまいます。
ご存じだとは思いますが、診療所の開設には管理者の選任をしなければ医院を開院して、診療を行うことはできません。通常、分院長がこの管理者になっている事例が多いと思うのですが、今回のご相談も、分院長の先生が管理者をしていましたので、分院長が突然に退職するとなると、代わりの管理者の選任を行うことができなければ診療を継続することは不可能です。また、管理者になることができるのは歯科医師に限りますので、当然歯科衛生士や歯科助手の職員を管理者に立てることはできません。しかし、理事長先生は本院の管理者になっており、一人の歯科医師が管理者になることができるのは一つの診療所に限られています。
そこで、弊社に何が何でも2週間以内に分院長を見つけてほしいとの依頼が舞い込んできました。しかし、現実的には2週間で分院長候補が見つけるということは現実的ではありません。
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そもそも、なぜこの分院長は突然退職を切り出したのでしょうか。また、なぜ後任の分院長の歯科医師がこの法人内に在職していなかったのでしょうか。多くの問題があるように思います。
まずは、この突然の退職を切り出した分院長から見ていきたいと思います。分院長は30代後半で、歯科医師としての経験年数は6年、もともとは勤務医としてこの法人に勤務をしていましたが、もっと給与が欲しいと考えていたところに、理事長先生が分院を一つ増やそうと考えたタイミングを見計らって、分院長に名乗りでました。しかし、実際にはかなり開業志向が強く、より高給を望む理由も開業資金を貯めることが目的でしたので、分院長を経験したいわけではなく、単純により分院長のほうが給与が高いことと、理事長の目から離れた分院で、自由気ままに診療したいとの思いから分院長に名乗り出たのでした。
一方、理事長先生も30代で複数の分院を展開する野心家のドクターで、ちょうど分院をそろそろもう一医院出そうと考えていた矢先、勤務医の先生から分院長を行いたい、分院長を任されればより長期で勤務したいとの申し出を信じて、今回突然退職を申し出た先生に分院長と管理者をゆだね、新しい分院を私鉄の駅前の好立地に開院させたのでした。
そして半年後、ようやく患者さんの数も増えて、毎月の新患の数もぐんぐん伸びている矢先に今回の事件が勃発したのです。
その背景には、分院長の先生のもとに歯科医院の居抜き物件を買い取らないかという「おいしい話」が舞い込んできたことが発端でした。この話は実は分院長就任直後に舞い込んできたのですが、さすがに分院長に就任してひと月で分院長辞退を理事長に申し出にくく思ったため、「おいしい話」は水面下で交渉を続け、いよいよ買い取る前月になって、理事長先生に急に「開業」することと「退職」することを伝えたのです。
これを聞いた理事長先生は激怒しました。当然といえば当然です。自ら進んで分院長に志願しておいて、突然の自己都合退職。しかも、この退職は半年近くも前にはわかっていたのですから、理事長としては欺かれたとの思いが強く、怒りはおさまりません。
結局、分院長は退職を強行し、分院は閉院。現在は理事長が分院長を相手取って損害賠償請求を行うという結果になってしまいました。
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さて、今回のポイントなのですが、
① 分院長の雇用に際しては慎重に行ったほうが良いということです。あるいは開業を急いでいるドクターであれば、このように密かに開業計画を進めていることも考えられるので、しっかり分院長候補のドクターの将来設計や、分院長の任期についてしっかり雇用時に取り決めを行う必要があったように思います。また、分院長候補のドクターがご結婚されている場合は配偶者の考えなどにも注意しておいたほうが良いと思います。
② 法人内に、有事に備え少し多めに勤務歯科医師を雇用しておくことも今回のような突拍子もない事態に対処する有効であると思います。
③ 職員同士のコミュニケーションをしっかり行い、分院のスタッフとは本院のスタッフ以上にコミュニケーションをもつ機会を増やすことで、ある程度は未然に防止できたり、あるいは前もって情報が入ってきたりしたのではないかと思います。
④ 歯科医師の採用時に、求職者のドクターの人間性、特にコミュニケーション能力に注意して採用面接を行うことが重要であると確信しています。とりわけ、今回のような事例では分院長の先生は大きくコミュニケーション能力が欠落していた可能性があり、自分のことしか考えない自己中心的な性格を未然に看破していればこのような憂き目を見ずに済んだのではないでしょうか。
⑤ 有事に備え、分院を売れるように業者や医院継承ブローカーなどとのつながりを作っておいたほうが良いと思われます。
弊社ではこのような最悪の事態が生じないようにしっかり求職者のドクターには開業時期や、希望勤務年数、将来設計などについてヒアリングを行っております。しかし、それでも分院長を任せるにあたって人選は大事ですね。
次回は雇用した歯科医師の親が怒鳴り込んでくる職場についてレポートさせていただきます。
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