無気力、過保護歯科医師を面接で見破るには無気力、過保護歯科医師を面接で見破るには【こんな歯科医師どうする!?②】

前回の続きで、研修医を無気力に過ごし、なにも臨床ができない、あるいは研修機関で臨床をさせてもらえなかった歯科医師は、10年前に始まった臨床研修医義務化以降急増しているように思われます。その原因の一つが、臨床研修プログラムと、それを行う研修施設のあり方などにももちろん原因はあると思われますが、同時に現在一線でご活躍の40代、50代の院長先生方から聞こえてくるのは、ゆとり教育への嘆きや、あるいは歯学部入学者の質の低下、あるいは歯科医師としてのモチベーションの低下などが指摘されています。

もちろん、それらがすべて原因ではないと私は信じていますし、ゆとり世代の中にも社会の第一線で大いに活躍している人材は星の数ほど存在します。

しかしながら、前回コラムでお話したK先生のような事例では、本人は無気力で、社会人としての自覚が乏しく、かつ保護者が過保護で、社会人として本来は自身で対処すべき問題にも親が介入してくるような事例が後を絶ちません。

さて、このようなドクターを卒後2年目の歯科医師として採用してしまうと、おそらくは院長先生と雇用した勤務医との間でぎくしゃくした関係がやがて表面化し、同じような問題が起こる可能性があります。

これはK先生のようなドクターに限らず、2年目、3年目の若手のドクターの雇用においてはたびたび起こり得ることで、すでに過去にこのような経験をされた院長先生も多数おられるのではないでしょうか?

私が多くの院長先生とお話するなかで、昔は学生時代から、かなり臨床経験を積むことができ、大学を卒業して2年目にもなれば、ある程度は自分で治療ができたとおっしゃる院長先生が大半です。しかし、現在は臨床研修医時代、あまり患者さんに接する機会が少なかったとおっしゃる若手のドクターが急増しています。そのため、ある程度のことはできるだろうと思って採用した2年目、3年目のドクターが、実際に臨床の場に立たせてみると何もできないことから、雇用時の期待感が失望に変わり、それを勤務医にぶつけてしまうことで、人間関係に影を落としたり、あるいはその失望が原因で、雇用条件の見直しを行うと、勤務医との信頼関係が維持できなくなり、勤務医が早期に退職してしまう、あるいは最悪労使問題に発展するようなケースもちらほらあるようです。

では、どうすればせめてK先生のような無気力なドクターを面接時に識別し、採用を見送ることができるのでしょうか?

私は多くの院長先生や若手の勤務医の先生とお話するなかで、これだけは面接時に気をつけていただきたいと思う項目があります。

① 歯学部を卒業するのに10年以上かかっていないか

若手のドクターに聞くと、現在私立の歯学部では留年する学生の数が歯科医師国家試験が難化しだしたころから増加しているとのことです。特に6年制で卒業試験にパスできない学生は多い大学では100人強の学生数に対して30人程度まで膨らんでいる大学もあるとのことで、留年すること自体はだれしもが経験する可能性があるとのことでしたが、それにしても4回も5回も留年するというのは歯科医師になるモチベーションがあまり高くないのではと考えられます。

② 臨床研修を中断していないか

私の知る事例では、過去に北陸の大学病院で臨床研修医が担当教官と大喧嘩になり、臨床研修を中断する事例などを知っていますが、よほどのことでない限りは臨床研修の中断とはせっかく取得した歯科医師のライセンスを失効するのと同様の行為です。

もちろん、他にも臨床研修中断の理由が女性医師の場合では出産などがあり、これらは人生の一大イベントのためそれを優先する心境は大いに理解できますが、基本的に一度臨床研修を中断すると、研修プログラム再開はそれを引き受けてくれる臨床研修施設を自力で探さないといけないことなど、かなりハードルが高くなることから、もし臨床研修を中断した経歴のある歯科医師の場合は、面接時にその中断理由などには注意すべきであると思われます。

③ 臨床研修終了後の就職先を転々としていないか

若手の歯科医師で、臨床研修終了後に勤務先を転々とされているドクターと時々お会いすることがあります。多くの場合は職場環境になじめなかったことや、人間関係などを理由にされる先生が大半で、中にはやむを得なかったのだと共感する事例もありますが、それにしても1年で何回も転職を繰り返しているような経歴をお持ちのドクターの場合は、継続力や忍耐、協調性に問題のあるドクターもいらっしゃると思いますので、面接時に転職の動機などについて注意してヒアリングされることをお勧めします。

④ 臨床研修終了後に訪問診療のみを行っているドクター

高齢化社会が加速するこの日本の医療環境において、介護の必要な高齢者のQOLの向上を図るべく在宅医療の整備が急務であることは直接医療に従事していない私でも十分理解しているつもりですが、それにしても臨床研修プログラム終了後に、全くと言っていいほど上司のドクターの目が届かない訪問先で、臨床を磨いていきたというドクターについては、はたして一般歯科のチェアサイドで行う、あるいは求められる臨床力との乖離がないのか心配になってしまうのは私だけでしょうか。もちろん、訪問歯科の必要性や、そこで、情熱をもって診療されている多くの歯科医師の先生方がおられることは私もよく知っていますが、一部のドクターは、上司に叱責されない、楽だから、何も特にしなくて良い、早い時間に帰宅できるなどを理由に訪問歯科で非常勤歯科医師をするアルバイト感覚の歯科医師がいることもまた現実です。

これは訪問診療に携わる一部のドクターにのみ該当する事例で、これらのドクターが稀有な存在であってほしいと願うのですが、面接時に訪問診療のみの経験しかないということであれば、稀有な存在の先生であるか否かを確認されることをお勧めします。

上記①~④は私が多くの若手(2年目~3年目)のドクターの面接に立ち会い、かつ多くのクライアントの院長先生とお話してきた中で気をつけた方が良いと思うポイントです。

次回も若手歯科医師を雇用したところ、労使問題に発展し、その親が労働基準監督署に通報するに至った事例についてお話させていただきたいと思います。

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