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夜間の歯科衛生士学校に通う学生は、タフで頑張り屋な衛生士の卵たち
働きながら資格を目指す!それは想像以上に過酷なものだった
私は過去に、フリーランスで様々な歯科医院を渡り歩いていた経験があり、そこでたくさんの歯科医師や衛生士と仕事を共にして参りました。指導する立場でありながら、出会いの数だけ存在する多様な考え方に触れ、私にとっても大きく成長する時間でもありました。その中で、信念のない歯科医師が運営する歯科でバイトをしながら夜間の衛生士学校に通う学生との出会いは、とても思い出深いものとして今でも鮮明に記憶しています。
彼女は短大を卒業後、就いた仕事にやり甲斐を見出せずにいましたが、治療でお世話になった衛生士との出会いが彼女の人生を変えました。昼間は歯科医院でアルバイトをしながら学費や生活費を稼ぎ、夜間の衛生士学校へ通学し勉強に励んでいました。睡眠時間は3~4時間という中、バイトでも知識を得ようと毎日必死な彼女が、モチベーションの低い歯科医師や衛生士が働く職場で失望しないか、私は不安でなりませんでした。
私が仕事で訪れる日は、朝から彼女のカリキュラムに目を通すことが日課となっていました。本来、私の契約にはない事でしたが、山積みされた課題を頑張る姿に全力でサポートしない訳にはいきませんでした。バイトをしながら学べる環境の歯科医院だったら救われましたが、指導できる衛生士もいない、ただ雑用だけの職場では希望はありません。だからこそ私が出勤する日くらい、彼女のために何かしてあげたい気持ちになったのでした。
アルバイトをしながら給料と知識の両方を手に入れよう
私が学生だった頃はまだ夜間の学校は数少なく、放課後に数時間、歯科医院でバイトをするというスタイルが主流でした。恩師には「学生を快く受け入れてくれる様な院長がいる職場でバイトをしなさい!」とアドバイスされていました。バイト先の影響は大きく、衛生士に対するイメージが変わりかねないと言うのが理由でした。確かに私も影響を受けました。そんな点から、卒業生が就職している歯科医院がよく選ばれていました。
夜間の衛生士学校のメリットは、働きながら学ぶ事を前提にしている為サポート体制が充実しています。また、年齢層や社会経験などにも幅があり、多様な経歴の学生が集まった学生生活は刺激的と言えます。過酷な環境を選ぶにはそれ相当の覚悟があっての事ですから、学生たちは皆、経済面だけでバイトを選ぶのではなく知識を吸収しようと必死です。だからこそ、それに応えられる環境を整える事も歯科医師や衛生士の役目なのです。
私も週に3日、午後の4時間をバイトに充てていましたが、学生の私にとっては過酷な日々に感じていました。それでも当時は、ファストフードで働く同世代の人とは比較にならない程の時給を頂き、おまけに将来の役に立つバイトは魅力でしかありませんでした。夜間で頑張る学生は、この何倍も苦労して資格を得ようとしている訳ですから、実家暮らしで、バイト代はお小遣いと消えていった私にとっては、尊敬に値する存在でした。
意欲のない先輩衛生士の心を動かした、夜間の衛生士学生の底力!
バイト先に恵まれなかった学生は悲惨です…学ぶ時間もそこそこに、ただストレスだけ抱え込む様な日々では報われません。仕事に熱意の感じられない歯科医師の下で働く衛生士も、これまた悲惨です。衛生士である私が、歯科医師のやる気を呼び起こすなど到底出来るはずもなく残念でなりませんでしたが、同じ衛生士なら何とかなるのでは?と考える様になりました。昼夜問わず頑張る学生の姿から何かを感じ取って欲しいと願いました。
この衛生士も、最初はきっとやる気に満ちていたかもしれません。それが、自分の置かれた環境や出会いによって影響を受ける事は少なくありません。ならば、学生と一緒に学ぶきっかけを作ってあげればいいと考えました。苦手な学科や過去の試験問題などを積極的に質問する学生に刺激された様子の衛生士は、思惑通り自分から率先してTBIやSRPの実技を見直す様になりました。
私が勤務しない日は、学生が衛生士を頼り、衛生士もそれに応えるように力を付けていきました。サボり癖のあった衛生士は、いつしか患者がいない時間を見つけては実技練習のパートナーを買って出て、自分のキャリアアップにも繋げていきました。衛生士学生の勤勉さが、ひとりの衛生士のやる気に火をつけた結果でした。3年間、心が折れそうになる事もあるでしょうが、その強い意志があれば必ず卒業し、試験に合格できるでしょう。