新規開業後に、伸び続けて行く医院の立地戦略と人口動態分析【I:歯科時流と開業立地選定4/5】
楽しい開業医生活を送るための秘訣は、何よりも医院の立地選びにあるということです。
実際、ほとんどの開業指南書には、開業するためには、まず医院立地を選ばなくてはならないと書かれています。
では、第二はなんでしょう?
第二は資金繰りだそうです。たしかに、私も開業にあたって資金繰りについては頭をなやませましたが、資金繰りの話まで今日はしている暇がありませんから、これについては後日お話させていただきたく思いますが、第一は医院の場所選びだそうです。そこで、また簡単な質問をします。あまりにも簡単すぎて、面白くないかもしれません。2つの町があります。1つ目の町は、30年ほど前に開発された、いわゆるオールドニュータウンで、一戸建ての家が多く、高齢化が進んでおり、町にも活気がなくなってきている郊外の町を想像してみてください。もちろん、開発された当時に何件かの歯科医院がすでにこの町には存在しているということも付け加えておきます。
2つ目の町は、最近開発が始まったばかりの活気あふれる街で、若い夫婦が移り住み、まさにこの不況のなかでもマンションが建設されているまちです。まだ競合する歯科医院の数も少なく、舗装された道路もきれいで、家の屋根にはソーラーパネルが取り付けられており、道路わきには木々が植えられ緑豊かな雰囲気を保っているところです。さて、先生方はどちらの町で開業したいですか?
さて、この問題の答えを言います。私ならば、間違いなく1つ目の町で開業します。現に私の診療所がある町は、まさに1つ目の町と同じで、もはや人口はすこしづつ減ってきており、町は高齢化の一途をたどっており、よく地域のグランドでお年寄りが妙にスローなテニスをしていたり、ゲートボールをしたり、子育ての終わった奥様たちが何やらダイエットを意識してみんなで夜な夜なウォーキングしてみたりしている、そんな町です。ここで、セミナーの初めの方でお話した受療率の話をもう一度思いだしてください。受療率とは、人口の何パーセントが受診するかということを表した数字ですが、実際、この数字は年代によってかなりの差があると思います。
例えば、20代、30代の患者さんで、デンチャーやブリッジなどの欠損歯補綴をした患者さんの数はそんなにいなかったのではないでしょうか。また、Pが進行し、P治療が必要になる患者さんも、当然40代、50代、60代が中心ではないですか?たしかに、小児、矯正などの専門科目を得意とされる先生ならば、その限りではないでしょうが、一般的に歯科診療を行っていくのであれば、高齢の患者さんが多い地域の方が間違いなく受療率は高いといえます。つまり、歯科の受療率とは地域によってかなりのばらつきがあるのです。言い換えると、当然ですが、同じ人口ならば、高齢化が進んでいる地域の方が、受療率は高いため、歯科医院の患者さんになる人口が多いということになります。また、20代、30代でマイホームを買った夫婦はもちろん住宅ローンが、また40代の夫婦であれば子供の養育費、学費などが負担になって、案外自由に使えるお金が(つまり自分たちに使えるお金が)ありません。でも、60代、70代になると、案外自分たちに使うお金は多いのです。住宅ローンの返済も終わって、子供にもあまりお金がかかりません。身近な例で、先生方のお父様、お母様を想像してください。結構ご自分にお金を使っていませんか?
ということで、当然50代以降の患者さんの方が自費率も高いのです。自費率の高い低いは地域がらもありますから一概には言えませんが、審美治療などの例外を除けば、間違いなく年配の患者さんの方が高額な自費が出ることは間違いありません。
さらに、現在、開院後、1年から3年以内に廃業に追い込まれる歯科医院が増えているということです。おそらく資金計画に無理があったのでしょうが、このことから考えても、開院後の伸びは必要不可欠です。第一、開院して2、3年たっても伸びがいまいちというのでは、先生の精神衛生上きわめて悪いとおもわれます。間違いなくかなりのストレスになります。開業後、半年で非常識に2~3週間のバカンスを取るどころか、永遠にバカンスをとってしまいかねません。
ですから、やはり新規開業で必要なことは、開業後の伸びです。